電力の話が終わったところで電力量よ。単位はワット秒(W·s)とか、ワット時(W·h)とか。2 W で5秒動かせば 10 W·s だし、3 Wで6時間動かせば 18 W·h になる。
 消費電力はチマチマ変動するんだけど、その辺をひとくくりにすれば「電力量は電力の時間積分」ということになるわね。でもって、前回の流れから言えば「トータルの時間で電気が実際にやった仕事」よ。ワット秒はジュールと同じ次元だから、

1 W·s = 1 J

がまんま成り立つ。もちろん、「実際に消費された電気エネルギーの総量」でもあるわ。仕事だとかエネルギーの話は次に回すけど、これらの用語は物理学の方で使われることが多くて、電力管理とかの実用的な分野では「電力量」を使うことが多いわね。回路理論の計算だと、その時の状況によるけど「電力量」か「エネルギー」かな。


 私たちが普段耳にする電力量の単位は、キロワット時ね。ワット時に、キロメートルとかの「キロ」を付けたものよ。秒よりも時間単位で管理することが多いのと、「キロ」がないと数字がバカでかくなるからこうしてるのね。ワット秒とキロワット時の関係はこうよ。

3600000 W·s = 1000 W·h = 1 kW·h

 3600秒が1時間で 1000 W が 1 kW だから、こうなる。てなわけで、電力量の計算をちょっとやってみましょうか。


 問題。ババン! 1日1回500Wの電子レンジを6分回すのを30日間やりました。電力量は何kW·hになるでしょう?


 計算に入るわけだけど、単位を見ての通りkWとhをかければいい。まずキロワットの方だけど、500 W って決まってるから 0.5 kW ね。終了。
 次、時間。1日6分を30回やるんだから、トータルで180分、つまり3時間ね。0.5 kW で3時間動かすんだから、かけ算して1.5 kW·h。しゅーりょー。この数字がそのまま電気代に反映されるわよ?

 冷凍食品とかだと、500 W で4分だとか 600 W で3分だとか書いてったりするけど、どっちの方が電気代がオトクかっていうのは、kW·hを計算すれば分かるわ? 電気代っていうのは 1 kW·h 当たりいくらって決まってるからね。500 W の4分で kW·h を計算すると数字が小さくなるんだけど、5 × 4 = 20 で 6 × 3 = 18 だから、600 W の3分でやった方が10%の節約になるわよ? 冷食が受けるエネルギーも10%減るから、ちゃんとあったまるかは別問題だけど。


 「電力量は電力の時間積分」って言ったからには、もうちょい複雑な計算をしてみましょうか。とある家庭の1日の消費電力推移がこうなったとしましょう。直線だけでやると電流のページでバッテリー放電の計算やったのと同じ感じになっちゃうから、レベルアップってことで曲線も入れたわよ?

 うっひゃー、超メンドくさそう。まずは曲線部分は放置して直線部分から計算しましょ。
0時から6時までが40 W、
6時から12時が100 W、
12時から12時半が600 W、
12時半から17時が100 W、
17時から20時が300 W、
20時から21時はすっ飛ばして、
21時から23時が300 W、
23時から24時が40 Wよ。だから、

 ( 6 – 0 ) * 40
+ ( 12 – 6 ) * 100
+ ( 12.5 – 12 ) * 600
+ ( 17 – 12.5 ) * 100
+ ( 20 – 17 ) * 300
+ ( 23 – 21 ) * 300
+ ( 24 – 23 ) * 40

= 240 + 600 + 300 + 450 + 900 + 600 + 40

= 3130 [W·h]

= 3.13 [kW·h]

になるわね。で、最後、これに夜8時から9時の分を足してあげればいいわ。ガチ、積分します。

 まず、あのカーブの式が、

P = – 4800 ( t – 20.5 )2 + 1500

って出てるわね。夜8時半のとこをピークにした二次式の山よ。夜8時から9時までの間の消費電力量を求めるには、こいつを積分する。式にするとこうね。

 W20-21っていうのは、20時から21時までの電力量ですって意味よ。この辺の名前は自分で決めていいわ。( t – 20.5 )2 なんていう鬱陶しいのがあるけど、

になるからこれを使うと、

になるわ。つまり 1.1 kW·h ね。あとは他の時間帯の分の 3.13 kW·h を足してあげれば、1日分の消費電力量が 4.23 kW·h って求まるわ。このままいくと30日で 126.9 kW·h ね。見ての通り、24時間の消費電力量のうち1/4が20~21時に集中してるから、ドライヤーとかケトルを何十分もガンガン使うと電気代に響くわよ?

 電力量もグラフに入れるとこんな感じ。電力がその場その場の値であることに対して、電力量は累積になってるわ。消費電力が大きい時間帯は傾斜が急になってるのが分かるわね。これは1日分だけど、これをずっと測り続けて1ヶ月おきに電気代が請求されてるのよ。というわけで、電力量の授業は以上!