2020年10月8日、無事に本作が完結を迎えました。最後までお付き合い頂いた皆さま、ありがとうございました。まだの方、このページにはネタバレが含まれますのでご注意ください。
書き終えた感想としては、「やっと終わった・・・」です。私の悪い癖ですね。自分がやりたくて始めたのに途中から半分義務感覚になってしまうというパターンです。今となってはたびたび休載してしまう作家や漫画家さんの気持ちがすごく分かります。更新ペースを落とさずに最後まで駆け抜けることができ、ホッとしているところです。
ストックは「執筆中小説」に並べて随時補充していたのですが、最終回が近付き、残り少なくなってきた時は感慨深いものがありましたね。そして、最終回の予約投稿を仕掛けた時はひとしおでした。「この先、自分の身に何が起ころうとも、この物語は完結を迎える」、これ以上の安心はありません。
反対に、全話分のワードファイルが書き上がった時の達成感は意外と小さかったです。それの少し前、余裕を持って書き上げることができると分かった時の方が大きかったですね。解放された気分になりました。
さて、何とか物語を締めくくることはできましたが、反省点も多々残ったのでそれを記していきたいと思います。とりあえず、自分が思う本作の反省点で打線を組んでみました。
1. スロースタート
2. 2章中盤のグダり具合
3. 展開ありきのシナリオが目立つ
4. 登場人物を死なせるのが下手
5. 偏見の色が強い5章
6. スクエア教や花巻匠に関する描写の少なさ
7. 中野君の扱いが全体的に不遇
8. 終盤の戦闘シーンが粗い
9. 設定倒れの街が多い
ひとつずつ見て行きたいと思います。
・反省点1. スロースタート
本作品ですが、開始直後の盛り上がりは薄いです。つかみで失敗すると誰も読んでくれないというのは承知していたのですが、序盤から熱い展開を続けようとするとシナリオが安定しそうになかったので早々に諦めました。つかみとシナリオ構築の両立ができなかったことは大きな反省点と言えるでしょう。ネット投稿小説なので打ち切りはありませんが、読者による「この作品切るわ」は十分に起こり得るので、そんな中でお付き合い頂いた皆さまには感謝しかありません。
・反省点2. 2章中盤のグダり具合
これは、もう・・・はい。自分の実力を痛感した部分であります。2章はミステリー風にしたかったのですが、書いてみるとアラ不思議、全然できない。唐突などんでん返しにしかなりそうになかったので大人しく諦めました。どのみち結構無理のある真相になってしまいましたが・・・。
「大勢の学者が何十年もかけて解けない謎を、主人公たちが魔法あるいはプレイヤーだけが持ってる能力を使ってたった数日で解く」という制約に縛られたのも大きいです。
その結果として、中盤はただ神殿の中を歩き回るという展開が続きました。当時は週1回の更新でしたが、あまりの進まなさに自分でもイライラしてきたので、ストックに余裕もあったため更新頻度を上げました。それでも2章の途中で切ってしまった方はいらっしゃると思います。そんな中でも最後まで読んで頂いた皆さま、ありがとうございました。
・反省点3. 展開ありきのシナリオが目立つ
こういう展開が書きたいという思いで小説を書いてる部分もあるので避けられないものではあります。しかし、自然な形で「書きたい展開」に繋げるのもこちらの仕事です。3章は、書きたい展開を先に全部作ってから挟み撃ちする形で話を繋げたので、展開が先行したと言ってもいいでしょう。頭から話を書いていけば整うという訳でもないのですが、こういう流れにしようと決めていることにシナリオが振り回されるのが4章以降でも散見されたのは、反省すべきですね。
・反省点4. 登場人物を死なせるのが下手
「展開ありきのシナリオ」の最たるものが、登場人物の死です。割と唐突な流れになったので、本来は読者の心を動かさねばならない「登場人物の死」が却って足を引っ張っているのではないかと恐れ慄いているところです。4番に据えるに相応しい、最大の反省点です。
4章については、千尋がブルーメのお願いに応えるのに失敗するという展開にどうしてもしたくて、こうなりました。にしてももっと話の持って行き方があっただろうというのは拭えません。4章単体で物語を作るならハッピーエンドにしていただろうと思います。この辺りが、ストーリー全体の流れもある長編作品の難しいところですね。
6章に至っては、4章ほどの制約がないにもかかわらず、です。実際、書いてる時は「これは熱い・・・!」と思いながら書いていましたが、更新前の校正の段階で「これ必要だった・・・?」と感じたのは確かです。
しかし、その段階で既に、ブチギレて工場に引火 → アクアラビリンスを見せる → 315話で章題回収という流れになっており、更新頻度を保ったまま作り直すのが困難だったためそのまま走りました。更新を鈍らせると読者を失う恐怖もあり、妥協した結果になります。直前に葵の大活躍もあったので、その余韻を残したままクレイジストはあっさり倒してマリーナ戦に移る流れにしても良かったかも、と今でも思っています。
・反省点5. 偏見の色が強い5章
そもそも私が小説を書く目的に「自分が日々感じていることを小説に乗せる」というのがあり、たびたび主人公を通じて毒が吐かれるので、そこに否定的な意見が出るのは避けられないだろうなとは思ってます。
特に5章は偏見の色が強く、6章に繋げるため人々同士の対立を描く必要があったのですが、人によってはかなりの不快感を抱いてしまうものとなったのは間違いないでしょう。
仕事帰りに駅前の路上ライブに遭遇するとイライラするという私の実体験が基なのですが、それとは反対に「路上ライブを聞くのが気晴らしになる」という方もいるでしょう。だからこそ論争が起こるものなのですが、「イライラする派」と「気晴らしになる派」の両者がいる中で全ての人が納得できる小説を書くのは不可能に思えるほど難しいと感じた、5章の執筆でした。
・反省点6. 終盤の敵や花巻匠に関する描写の少なさ
最終章となる6章では、旅の大きな目的である匠君がもちろん見つかるのですが、いささか唐突感があるのは否めません。各章の話を進める中で匠君に関する情報も少しずつ集まっていく流れにできれば良かったのですが、監禁されているという状況ゆえに一切情報が出回ってないことになったのは、大きな反省点です。
ゼムやスクエア教といった敵についても同様で、ストーリー全体の本筋に関わってくるので、スクエア教は2章、ゼムもせめて4章からは、少しずつ怪しさを滲ませていくべきだったと思っています。
実のところ試みようとしたのですが、各章の話を途中で折る形にしかならずテンポを悪くするだけだったので断念しました。この辺りは、私の力不足と言えるでしょう。
・反省点7. 中野君の扱いが全体的に不遇
これは非常に悩ましい問題でした。私自身が、中野君のようなタイプの人とは距離を置いて生きてきたので、心理描写が全くできず、どこか軽い感じで動いている印象が押し出される形となっていまいました。
主人公の大村君視点なので中野君が悪いみたいな書き方になるし、彼が大村君の考えを受けれていく流れになるので、主人公を持ち上げる方向になってしまったのは否めません。
・反省点8. 終盤の戦闘シーンが粗い
これはもう・・・はい。序盤や中盤が粗くないかというとそれも微妙なんですが、終盤はバトルラッシュになるので目立ました。最終的には力でゴリ押しみたいなのが多いですからね・・・。知恵と魔法を駆使する感じにしたかったのですが、それができなかったのが悔やまれます。
これには執筆の進め方そのものの反省点もあって、オボロヅキ戦やマリーナ戦などの対戦カードは初期の頃から決まっていたのに執筆を後回しにしたのです。当時は通勤電車の中でも脳内再生できるぐらいだったのですが、そこまで進んでから書けばいいやと後回しにした結果、いざ6章終盤の執筆を迎えたら「あれ・・・どうすんだっけ・・・?」となりました。酷いものでした。
こうなってしまった原因は、4章から5章中盤までロクに戦闘シーンがなかったためと思います。久々の戦闘がホワイトヴァンパイア戦だったのですが、その時点で嫌な予感はしてました。戦闘シーンってどう書いてたんだっけ・・・となりました。その結果取った行動は、先にシナリオを固めて後から戦闘シーンを埋める、です。それによって余裕ができて落ち着いて書くことができ、何とか形にすることができました。そして6章もそれを踏襲・・・した結果が、お読みになった通りです。
先にシナリオが固まると、あれですね。6章は最終章だったということもあり、後から埋めることになる戦闘は無難に走りたくなってしまいますね。ただでさえ「展開ありき」のせいでハーミュー&ミルセーヌ戦で強引な展開が待っていたので、余計なことはせずに駆け抜けようという意識になりました。グダるのが一番の恐怖で、それがあって一戦一戦のボリュームが薄くなった気がします。3章の終わりで戦闘が続いた流れで全部書いてれば、多少は良くなったんじゃないかなと悔やんでいるところです。
舞台設定の練り込みが甘かったのも戦闘が単調になった一因でしょう。その割には舞台設定の縛りを受けた感が否めません。次の反省点にもつながりますが、自分が日々感じていることを小説に乗せるという執筆目的と、「書きたい展開」が先行したことにより、ファンタジー作品としては粗い舞台設定になってしまいました。
・反省点9. 設定倒れの街が多い
9番に据えてますが、ファンタジー作品としては大問題です。特に酷いのがエデュケイン、ヤーミー、ルーメンの3つで、街の特色が強い一方でほぼ素通りしてます。この3つ街で1章分の話作れるだろと言われたら返す言葉もありません。
これらの街の滞在期間はダンソン王家との会食を後ろ倒しにすれば伸ばせたので、せめてもヒャッカのような独立エピソードを織り込もうと直前まで考えたのですが、4章の本筋突入を遅らせる程のものができないまま最新話更新が追い付いてしまい、やむなくそのまま走りました。エデュケインの東には砂漠が広がっているので、舞台となっている世界の西側20%ぐらいはストーリーに全く絡まないんですよね・・・本当にゆゆしき事態です。
という風に、書いてる途中も「う~~ん」と思っていたところがそのまま残ってたりします。書いてみて初めて分かったことですが、話を作るというのは本当に難しい。この実感が本作品を通じて私が得たものですね。今後に活かしていければと思います。
改めまして、最後までお付き合い頂いたみなさま、ありがとうございました。